影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
「なぜ、人は動かされるのか」。
「どうしてこんなもの買ったのだろうか?」とか、「賛同していないはずなのに「はい」と言っていた」とか、そんな経験があるんじゃないだろうか?この「あっ、やられたっ!」って感じ、ぼくにはたくさんあるのですが(^^;)、本書を読んで、納得。
本書では、人に○○させる側の人(その道のプロ)が理解し実践している、人間の行動をつかさどる6つの原理(1.返報性 2.一貫性 3.社会的証明 4.好意 5.権威 6.希少性)を事例を交えながら紹介しています。
1.返報性
返報性(へんぽうせい)なんて言葉、恥ずかしながら知りませんでした。返報性とは、「人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。」らしいのですが、いわゆる「ギブ・アンド・テイク」にあたります。返報性を突いた事例は、スーパーの食品売り場の試食なんかが、代表的です。全く買うつもりが無くても、試食を差し出されて食べちゃうと、その商品を買わなくちゃって気持ちになりますよね。
2.一貫性
自分がすでにしてしまったことと一貫していたい(貫きたい、ブレなくしたい)。そして、一貫していると他者から見てもらいたい、という欲求のことです。
一貫性を使った例として、目標を書き周囲に宣言することがそうで、目標達成に向かう姿勢を他者から見てもらうことで自らを奮い立たせることができます。また、相手から承諾を引き出すことに利用されます。あるレストランでは、予約をしたまま現れない客の問題を一貫性を使い解決したそうです。予約の電話を受けたとき、「変更がありましたらご連絡ください」と言っていたところを「変更がありましたらご連絡いただけますか?」と相手に尋ね、答えを待つようにしただけなのですが、これは「はい」と答えたこと客が、自分の答えに従おうとする心理を上手に利用している事例です。
3.社会的証明
特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断する(判断してしまう)ことです。代表的な例として、テレビのお笑い番組における「笑い声」があげられ、ネタがつまらない内容であっても、大げさな笑い声が聞こえてくることで、視聴者のウケがよくなるそうです。
また、人がたくさんいる街中での事故や事件に遭遇した場合の実例が、とても興味深かったです。具合が悪くなり動けなくなっている人がいても、だれも声をかけないし救急車を呼ぼうとしないことがあるということに驚きました。人には、周りにたくさん人がいればいるほど、誰かがすでに対処しただろう、私がやらなくてもいいよねと思う習性があり、決して薄情な世の中になってしまったってことではないのだそうです。ですから、不幸にも自分の体調が急変し動けなくなってしまった場合、目に留まった人だれでも構わず指名し、助けを求めることが大切で、そうすると高確率で助けてもらえるそうですよ。世の中、捨てたもんじゃ無いようです。
4.好意
人は、魅力的な人に好感を持ち、好きな相手には従う傾向があります。これは、まさにそのとおり。男のペテン師がハンサムで、女の詐欺師が美人であるってのも、間違いありません。また、自分に似ている人を好む傾向があるようです。そう言えば、テレビのコマーシャルで、有名人ではなく、一般の人々が商品の感想を述べているパターンをよく目にしますよね。あの手のコマーシャルもこの「好意」を突いた戦略だったんですね。
5.権威
権威を持った人を盲目的に信じてしまうこと、よく聞きます。権威を持った人というのは、自分よりも経験、知識も豊かであるだろうから、その人の言うことは疑わずに信じてしまいます。そうすると自分で考えないで済むから楽だし。だいたいはそうして問題はありませんが、その権威の実態では無く、そのシンボルに対しても反応してしまうことに大きな問題があるようです。相手の肩書き、服装、自動車など。オレオレ詐欺の受け子役の人は、きちっとしたスーツに身を包んでいるらしいですよね・・・。
6.希少性
最後は、希少性。これには、ぼくはよくやられてます。「Sale」、「数量限定」、「最後の一個」なんて言葉。必要ならいいけれど、ちょっと立ち止まり、それほんとに必要なのって冷静になりたいものです。
以上の6つの原理、覚えておいて損は無いです(^^)。